自然と人間の協働による永続的な地域社会づくり
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84行ってもそうだと思います。三河でも、お話を聞いていて、祭りとは何の場かと聞くと、「教育の場だ」とおっしゃる方が多いのです。「棒の手」の話がありましたが、それを伝承していく過程で、集落内で教育をやっていくのです。今、高校生になったときに都市に出ると、下宿代を含めてだいたい一人年間100万円です。高校3年間で300万円、大学へ行くと1000万円から1300万円のお金を持って、みんな都市に出ていって、その子たちが帰ってこないのが、今の農村の現状です。 先ほどの、個別報告で話した岩手県大おおつち槌町の吉きりきり里吉里の話もそうですが、学校教育とはまったく異なる社会教育がどの集落にもあり、その最高の場が祭りなのだろうと思います。それは何かというと、要するに生きるための教育をしていく。非常に人間的に深いものもその中で教えていきますし、社会の中での自分たちの役目も、その中で逆に与えられていくことによって、みんな生きがいを持っていくということがあると思います。専業農業ではなく、〝農的暮らし〟がしたい人々澁澤:先ほど話をしたトヨタ自動車と豊田市とでやっている人材育成ですが、年間30人程度が参加し、5年くらいやっています。その方々のうち約20人、その家族を含めて50人くらいが地域に入りました。地域には、働く場所がないだろうとよくいわれます。まず仕事をつくらなければ、地域に若い人たちは定住しないといわれるのですが、どちらかというと今の若い人たちは、先に仕事を辞めて地域に入ってしまいます。僕たちのころは仕事を見つけてから地域に入っていましたが、今の人たち、3・11以降の若者たちというのは、先に職場を完全に辞めて、こ

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