自然と人間の協働による永続的な地域社会づくり
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66生存と信用をベースとした社会を再構築しない限り社会は持続しない川井:中沢先生、ありがとうございます。ちょうど今、ひいおじいさまのお名前が出ましたが、澁澤先生、何かご意見はございますか。澁澤寿一(以下、澁澤):偉いひいじいさんで、私がこんなことをやっていて申しわけないのですが、先ほどの宮本常一さん(P59参照)のパトロンをやっていたのは澁澤敬三(*2)、これは栄一の孫にあたるのですが、ちょうど私が小学校5年くらいのときに彼が亡くなりました。その亡くなる前、小学校3、4年生のときに、「じいさんがとんでもないものをこの国に持ち込んだ。このままだと、日本という国がもうボロボロになるのではないか」ということを盛んに言っていたのを覚えています。 そのときに彼が言っていた「とんでもないもの」というのは、資本主義です。もともと日本には、まず自分たちが生きていく「生存」というものがベースにあり、もう一つ「信用」というベースがありました。その「生存」というのは、まさに今、中沢先生がおっしゃったように農業の部分で、「信用」というのは、たぶん彼に言わせると『論語』に由来しますが、江戸時代からの日本人の「結」や「講」といったことを含めた一つのパブリックな価値観です。 そうした「公共」の概念のうえに経済が成り立っていたものが、あっという間に経済だけが独り歩きをしていき、お金がお金を生むシステムができた。今の、それこそビットコインの問題もそうです。ビットコインと、今の日本の財政とどこが違うのかというと、たいして変わらないとさえ思える。国債も、ひょっとしたらビットコインかもしれないというような話もあるわ

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