自然と人間の協働による永続的な地域社会づくり
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64を図っていけば、良い方向に開かれていくかということが、お三方の話で、だいたい方向性が同じだということがわかりました。それは、いろいろな問題を抱えている日本の向かうべき方向性を示しているのではないかと思います。 今日、澁澤さんのお話を伺っていて、ベストセラーになっている『里山資本主義』という本の背後には、どうも〝澁澤さん〟がいるらしいということに気づいて、ちょっとゾクッとしました。 日本の資本主義を最初に立ち上げたのが、澁澤栄一(*1)を中心とするグループでした。澁澤栄一という人は、日本の資本主義は農業をベースにし、それに産業を乗せていくという大きな構図を描いていたと思います。 それから何世代かを経て、日本の資本主義というのは、今、変な方向に進んでしまった。その変な方向へ進んでしまった資本主義のせいで、土台になるべき農業は、ある部分はズタズタにされようとしている。大変ゆがんだかたちになりかかっている。しかし、それをどちらの方向に戻していけばよいのかということを今度は澁澤寿一さんたちが模索されていると思います。日本は、戻るべきはっきりとした資本主義モデルをもっている中沢:今、世界中で資本主義が暴走を始めています。農業をベースにした「原始的蓄積」という言い方も経済学にはありますが、いちばん土台のところで価値を増やし、資本の増える運動をもとにして、そのうえに工業や商業というものを組み立てていかないと、資本主義というものは円満に動かないのです。それが今は、金融の部分が非常に肥大してしまっていて、土台の(*1)澁澤栄一(1840ー1931)実業家。第一国立銀行(現みずほ銀行)をはじめ多くの企業の設立・経営に関与し、日本資本主義の父といわれている。澁澤寿一氏の曾祖父にあたる。

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