自然と人間の協働による永続的な地域社会づくり
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52作ったものか、瀬と淵のある川を維持するにはどういう工事をしなければいけないかなどと続きます。そして、17時になるとみんなが酒蔵に集まってジャズのコンサートを開く、というところで終わっています。今で言うとバックキャストです。「こういうまちを未来に実現したい。そのために3年後に何をやるのか、今年何をやるのか、今何をやるのか」ということを考えていく取り組みです。これを、1997年の真庭の、20人ぐらいの勉強会が行いました。そして、「これを形にしたいから、澁澤さん、手伝ってほしい」と言われ、1998年以来ずっと、木質のエネルギーと素材利用のお手伝いをしてきました。2010年にこの本を全員で読みました。そうしたら、85%ぐらいのことが実現されていたのです。未来とは今そこに住んでいる人の頭の中にしかないのだと痛感しました。●複雑系の産業創出真庭ではあらゆる試みをしました。柱も作りました。集成材も作りました。プラスチックもコンクリートも作りました。粉、炭、ネコ砂も作りました。ネコ砂とは猫の消臭剤で、今でも楽天市場のペット部門第1位を独走しています。ほかにアルコールも作りました。ペレットも売りましたし、発電もやりました。なぜこんなにたくさんのことを行ったかというと、1つに賭けてしまうと、それがダメになったときに、地域全部が潰れてしまうという恐れがあったからです。ですから、「とにかくやれるものは全部やろう」「何かがダメになってもほかで逃げられるような複雑系をつくろう」としました。産業の流れは、まず森から製材所に木が入ります。製材所で柱になるのは歩留まりで3~4割です。残り6割以上が捨てられていました。

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