自然と人間の協働による永続的な地域社会づくり
52/132

50岡山県真庭市の地域振興●地域概要本題に入ります。岡山県北部に真庭市という市があります。中国山地の真ん中にある、山に囲まれた地域です。岡山県庁まで2時間、鳥取県米子市まで車で1時間。生活圏は日本海に依存しているような地域です。市町村合併で人口は5万人程度になりましたが、街並みは古びてきて、櫛が抜けるように人が少なくなってきました。森林率80%以上ですから木だけはたくさんありますが、材価は低迷し、製材業や林業では食べていけない状況です。山の地代も二束三文です。私が初めて訪れたのは17~18年前ですが、当時は「タダでいいから山をもらってくれ」という話がたくさんありました。「子どもには引き継げない」「負の遺産でしかない」いう話でした。●地域振興の始まり真庭の人たちはその状況に対し、「少なくとも価値のある遺産に変えて子どもたちに引き継ぎたい」「指をくわえていても地域はなくなってしまうだけだ」ということで、地域振興を考え始めていました。真庭の人たちが考えた方向性は、「真庭市内の自然資源で生活が結ばれた実感を共有したい」「自然と人間とが結ばれているという実感を共有したい」。昔は山で薪を切ったり、山菜を採ったりしたけれど、今はお金で買うようになってしまった。あの頃の実感を取り戻して、地域の誇りを次の世代に渡したいということです。次に行政の方が挙げた望みは、山間部から出

元のページ  ../index.html#52

このブックを見る