自然と人間の協働による永続的な地域社会づくり
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16れて、野生の思考を失い、不確かなものをすべて視界の外へと追いやることで確信を得ようとしてきました。また社会生活では、安全をシステムに依存することで、あえて辛辣に言わせていただければ他人に責任を押し付けることで、安全神話という虚構をつくり上げ、漠とした安心感のようなものを得ようとしてきました。しかし、このような逃避型あるいは外部依存型の生き方で得られる精神の安寧は、歯車が一つ狂い始めるとたちまち瓦解してしまいます。その現実を東日本大震災は私たちに突き付けてきました。さらには、これからの都市と農山漁村の暮らしや経済のあり方、そして働き方を考えるにあたり、日本人にとっての21世紀という時代が不可逆的な人口減少を伴う高齢社会である、という現実から目を背けることもできません。したがって、経済的な発展・成長のモデルだけが豊かな未来を拓く唯一の道であるかのごとく吹聴するのは、とても無責任であり、それはまた、社会をミスリードすることになるような気がするのです。資本と人口のゼロ成長状態は人間的進歩の停滞を意味するものではないし、成長志向を抑制して生活の内実を豊かにする方向へと日本全体を導いていくことが、今は求められているのではないでしょうか。例えば医療や介護といったケア関連サービスは、今はサービス産業に分類されていますが、農業などの第一次産業との相性がとても良いと思います。活動範囲が限定的であり、流動性よりも関係性を求め、思想的にも農業と重なり合う部分が多々あります。これらはすべて生活の内実を豊かにする仕事であり、今日的な表現を用いれば、まさにソーシャルビジネスと呼べるものではないでしょうか。これからは「働くこと」への意識や、「生きがい」

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