自然と人間の協働による永続的な地域社会づくり
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15いう予感があったのです。なぜなら、地域社会が抱える問題は複雑系です。すなわち相互に依存し合う無数の〝部分〟により〝全体〟が構成されているため、〝部分〟へのアプローチから〝全体〟の挙動を明らかにすることができません。まさに社会は、様々な構成要素が非線型に連関するネットワークなのです。この複雑に絡み合った糸を丁寧にほぐしながら、また自然と人間が織り成す生命の営みを尊重しながら、農山漁村地域という全体にアプローチしていく柔軟で横断的な研究方法を私たちは模索してきました。その結果、学際的な研究チームを構成して地域の中へと入っていき、住民の方々の活動を多方面から積極的に支援していく実証研究のようなスタイルが、すなわちアクションリサーチという方法が、この研究には最も適しているのではないかという結論に至りました。それが本研究プロジェクトの始まりです。このプロジェクトを具体的に推進するために、JA共済総研では「食・自然エネルギー・ケアを基盤とする農山漁村地域の内発的発展モデルに関する調査研究」という事業計画を立ち上げました。これまでの研究とはスタイルを一新し、実践的な地域研究いわゆるアクションリサーチを実行することのできる研究基盤を、事業計画のなかに盛り込んだのです。研究のための研究ではなく、「地域力」と「人間力」と「創発」に期待した、その地域に暮らす人たちが主役となる創造的な研究です。●何を拠りどころに生きるのかこのような研究プロジェクトを推進していくために、私たちは思考習慣も変えていかなければならないのでしょう。西欧の科学革命を契機に、とりわけ日本では明治維新以降の近代化の過程において、私たちは科学的世界観に支配さ

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