自然と人間の協働による永続的な地域社会づくり
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14●研究のコンセプトについて昨今、とりわけ農山漁村については明るい未来を予感させるような話題が少なくなっています。しかし高齢化により人口が減少する農山漁村地域のいくつかのコミュニティでは、ささやかではありますが、来るべき未来を予感させるようなムーブメントが起こりつつあります。安全な食の流通、自然エネルギーを含む適正なエネルギーの生産と供給、そして理想的なケア・システムの構築など、人間が生きていくために必要な機能をコミュニティの内部で再構成し、それを維持可能なものへと発展させていこうとする取り組みが、すでに人口減少と高齢化がピークを迎え、財政が底をつきはじめた農山漁村地域で散見されるようになりました。困難を乗り越えて自然へと回帰しようとする農業生産者と、それを支えようとする地域住民や消費者たちによる日本的なCSA(Commu-nity Supported Agriculture)の基盤づくりや、基礎自治体と住民がNPOなどの協力を得ながら稼働させる小規模な自然エネルギー事業、そして政府が提唱する地域包括ケア・システムの原型ともいえるコミュニティ・ケアの展開などがそれです。そこで私たちは、農山漁村地域で生きる人々の生活と、その地域の歴史や文化や自然に深く関わりながら、研究活動を通して、地域の方々が新たな一歩を踏み出すためのお手伝いができないだろうか、と考えるようになりました。しかし、そのためには、従来の課題解決型の研究から知識創造型の研究へと、研究のスタイルもシフトしていかなければならないのだろう、と趣旨説明一般社団法人JA共済総合研究所調査研究部主席研究員  川井 真

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