自然と人間の協働による永続的な地域社会づくり
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125テーマである。新しい形態での、資本と労働の妥協が探られなければならない。人間が直面しているもう一つの大きな問題は、自然と人間がどのようにしたら新しい妥協の形態をつくっていくかということにある。それゆえ現代において、資本と労働と自然は、三位一体のかたちをしており、相互のあいだに新しい妥協の形態を図っていくことが、いま切実に求められているのである。農業における「組合」がもつ現代的な重要性は、まさにそこにある。農業者の組合は、資本と労働と自然の三者に深く関わっている。とりわけ人間と自然の妥協を模索しようとするとき、他の産業にくらべても、農業の果たすべき意味は重大である。農業の組合は、都市の労働者の運動からは一歩進んだところで、この課題に具体的に取り組むことができる位置にある。その動きはじっさいに地方の組合組織から起こるだろう。愛知県の農業者の組合の取り組みにおいて興味深いのは、農村部に蓄積されてきた潜在的な知的体系を新しいかたちに再生させることによって、この危機を乗り越えていくための新しい方向を開いていくことができると、農業者自身が自覚しているという点にある。いま人間が直面している大きな危機に対して、伝統的な知の形態を再活用することによって有効な道具がつくれるのではないか、自覚しはじめている。この地域の農業者は、比較的小さな社会単位のなかでなら、資本・労働・自然という人類的な問題を解決するために必要な、新しい妥協的な組織形態をつくりだす「実

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