自然と人間の協働による永続的な地域社会づくり
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122み込まれていく状況が生まれた。こうしてかつてのような労働と資本の対立は、しだいに意味を失っていった。しかしそのおかげで、資本主義は消費資本主義の段階に突入していった。高賃金を得た労働者が豊かな消費者として需要をおこなうのである。それと軌を一にして、さまざまな領域で技術革新が飛躍的に進み、生活水準も上がっていった。「黄金の三十年」と呼ばれる資本主義の繁栄期が、こうして訪れた。そうしたなかで、労働者の権利の延長上に、福祉の向上が求められるようになった。資本と労働の妥協のなかから福祉社会が出現してきた。日本も含めて世界中で福祉社会の形成が計られ、北欧でそれは完成に近づいていった。戦後のこの「黄金の三十年」をへて、資本主義は労使妥協の上に繁栄を築くことができた。その繁栄は冷戦と一体となって、先進諸国では安定した豊かな社会がつくられた。ところが一九七〇年代の中頃から、再び資本主義は危機に陥る。社会福祉のための支出が増大しすぎて、どの先進諸国でも国家会計を脅かし始めたのである。資本主義は資本と労働の妥協の上に成長を続けたが、その成長が福祉社会の成長とともに、ふたたび停滞に陥ったのだ。こうして長いデフレの時代が始まるのである。デフレは構造的な現象である。国家財政の大きな危機に陥ったイギリスでは、サッチャー元首相たちによってこのとき以来「新自由主義」の政策が採用されるよ

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