自然と人間の協働による永続的な地域社会づくり
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121組合をめぐる大きな変化は、資本主義の内部から起こった。競争的資本主義は、資本と労働の対立を続けているあいだに、根本的な危機に陥ったのである。生産過剰に陥ったからである。資本は商品をたくさん生産して供給するのだが、それを需要するはずの労働の側が困窮している限り、物は売れず、需給バランスはとれなくなってしまう。そのために二十世紀の前半頃から、慢性的な供給過剰に陥り、恐慌が周期的に発生するようになった。この危機を乗り越えるために、大恐慌と第二次世界大戦を挟んでアメリカは、資本と労働の妥協を生み出す新しい政策を採用した。フォード主義(フォーディズム)である。 フォード自動車会社が生み出した新しい資本主義のモデルでは、労働者の生活を向上させて生活福祉を整え、賃金を上昇させることによって、彼らを積極的な消費者にしていくことをめざした。労働者を豊かな消費者にすれば、需要が増大する。労働者がみな、自分の自動車を持ちたいと思うようになる。賃金の一部を自動車の消費に向けていけば、巨大な需要が発生し、慢性的な生産過剰の問題が解消されていく。これがアメリカで発達したフォード主義というもので、高賃金・高所得・豊かな消費生活という、アメリカン・ライフスタイルの確立である。 こうして、資本と労働の大きな妥協がおこった。資本は分配の不平等を改め、労働者の賃金が向上した。するとそれまで資本と対立的であった労働も妥協して、労働組合は、ある意味で資本に組

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