自然と人間の協働による永続的な地域社会づくり
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120で生きて機能していた共同体のなかで生きていた点にある。農村には、共同体の上に、共同体の組織とは重なり合いながらも別物としての働きをする、生活と生産の互助組織としての「組合」の諸形態があった。それは「ユイ」のような生活互助組織である。このユイのような伝統的な組合結合組織を利用するかたちで、農村における近代の組合がつくられた。そしてそれが現在の農業協同組合にまでつながっている。 農業者の組合は、労働者の組合とは異なる主題を抱えてきた。労働者も企業家も、近代がつくりだした存在であり、資本と労働の対立は、同じ近代世界の土俵上でたたかわれた。ところが農業者の暮らす農村は、近代世界とは異なる原理を多く保存する社会の上につくられていた。その時代の労働者の抱えていた困窮の問題は、すべてのものを商品化していく近代の交換原理そのものから発生していたが、農村の抱えていた困窮の問題は、おもに近代の原理との違いから発生していた。 農村の社会関係や世界観は、近代の交換原理とは異なる贈与的原理を中心として、つくられていた。自然を相手にする農業者の生産は、貨幣経済に組み込まれない多くの部分を含み、そのために、貨幣的世界のなかでは、貧しくなっていかざるを得なかった。協同購入、協同販売をおこなう農業者の組合は、こういう農業と資本とを媒介する積極的な役目を果たしていたのである。

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