自然と人間の協働による永続的な地域社会づくり
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111河合:中沢先生がおっしゃるとおりかもしれませんが、私どものような農村部を抱える農業協同組合は、もちろん農業を守り、発展させていくということも大きなテーマですが、農村そのものの生活をどうやって維持していくか、集落機能をどうやって維持していくのか、これも本当に大きな課題になっています。 ただ、JAといえども、経営体です。ある程度、採算ベースに乗らなければ、職員に給料も払えませんし、いろいろな部分の指導事業もできないわけです。もちろん、農業は主軸ですが、地域のライフラインを守る、その意味合いからして、人口がどんどん減少するところの収益事業、事業論でいう事業というのは、本当に難しい局面に立たされています。 私どもの地域は県土面積の5分の1もあって広いうえに、山手のほうにはお年寄りばかりが住む集落があるわけですが、そういうところでもガソリンスタンドや小さな商店のようなものがなければ、日常生活に必要な買い物にも行けないわけです。地域のライフラインを目線にした場合、私たちは採算が合わなくても、事業論として成り立たなくても、そうした事業種は残したい。そのような思いの中で活動を続けています。 山のほうの事業所は、ほとんどが赤字なのです。でも、協同組合だから、人口の多いところの利益が、そういうところの生活を支えている。税の分配と同じ理論だと私は思っています。農村部の協同組合の役割として、農業や自然を守ることは極めて大事ですが、そのようなことも兼ね備えて、経営体と運動体、二足の草鞋を履きながら、JAはやっていかなければいけないと思います。中沢先生のご指摘からすれば、生ぬるいかもしれませんが、私はそのような気持ちでさせていただいています。

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