自然と人間の協働による永続的な地域社会づくり
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108日本の武器は、土に接触した〝一次的なもの〟。自然との輪を絶対に壊させない川井:さて、食と健康についての話題が続きましたが、このあたりで中沢先生のお考えをお聞かせいただけませんか。 中沢:日本の武器、国際的な武器というのは、英語で言うと「primary」、一次的なもの、一次産業という言い方になると思います。食べることであるとか、医学の問題もそうですが、一次産業に結びつくものとか、とにかく一次的なもの。最初に土から採れたもの、土に接触したものを原料、材料にして、いろんな物産をつくる。その産業がだんだん上にいって、二次産業、三次産業になっていきます。日本の強みというのは、この一次、「primary」というところの根っこを保った産業や文化、感覚、ものの考え方、これらを発達させてきたということなのではないかと思います。 日本文化とは何か。ヨーロッパの文化と比べて、何がいちばん違うかというと、自然とのリンク、つなぎの輪の部分を絶対に強く保った文化がつくられているのです。これはもう宗教、神様のことから始まって、食べ物に至るまで、全部、そのようにしてつくってある。 ヨーロッパの神様って、山や川などの自然から離れてしまっていて、五次や六次など、けっこう高い位置にある神様なのです。でも、日本の神様は自然から離れないから、いつもリンクを保っている。それはキリスト教の神様から見ると、程度が低いと言われるのですが、程度が低くて結構なのです。この程度の低さが力なのだと思います。絶対に自然との輪を切り離さない神様ということです。 産業に関しても、自然との輪を絶対に壊させ

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