『共済総研レポート』震災復興現地レポート・アーカイブ

本サイトについて

東北地方を中心に広範囲にわたり甚大な被害を及ぼした東日本大震災ー。
本サイトでは、これまで当研究所機関誌『共済総研レポート』に掲載した「震災復興現地レポート」と関連する『日本農業新聞』の記事をまとめて閲覧することができます。
被災地における復旧・復興への道のりには、これからの日本の地域社会創りにとっても、重要な示唆が含まれていると考えます。震災の経験を風化させることなく、将来に活かす端緒として、本サイトをご活用いただけましたら幸いです。

2016(平成28)年3月11日 JA共済総合研究所 震災復興調査班

「震災復興現地調査」の取り組み経過

本調査は、東日本大震災・福島第一原発事故の被災地における地域住民や農業者の生活・農業の復旧・復興に向けた取り組み等についての現地ヒアリング調査です。
調査開始は2013(平成25)年。
調査対象は、岩手県 花巻地域、宮城県 仙台・石巻地域、福島県 伊達・相馬地域。調査結果は、『共済総研レポート』誌上の「震災復興現地レポート」として、随時公開しています。

最新調査

2017年10月4日(水)
調 査 先
○有限会社アグリードなるせ(東松島市)
○東北大学大学院農学研究科(仙台市青葉区)
調査概要
震災に伴う大津波で甚大な被害を受けた東松島市野蒜地区。JR仙石線の全線復旧(2015年5月)以後、高台に造成された野蒜ヶ丘では小学校の開校、災害公営住宅の完成と、新しいまちづくりが着々と進行しています。
今回の調査では、野蒜地区に根ざし、農業生産をはじめ多岐にわたる事業を通じて農村地域コミュニティの再生と活性化に尽力する農業法人として、有限会社アグリードなるせに注目しました。
2015年8月に竣工した農産物加工処理施設NOBICOでは、自家製粉の小麦粉や米粉を原料としたバウムクーヘン「のびるバウム」の開発・製造など、6次産業化を積極的に進めています。ほかに子どもたちに農業体験の場を提供するといった、教育とのつながりを意識した活動にも取り組んでいます。さらに地域のリーダーとして、高齢者福祉、観光、医療機関との連携を通じて、新たな時代の地域コミュニティの醸成を目指している様子が伺えました。

※本調査結果については『共済総研レポート』№154(2017年12月発行)に掲載しております。

有限会社アグリードなるせ
事務所

農産物処理加工施設
NOBICO

小麦粉・米粉を原料にした
「のびるバウム」の製造・販売

2016年7月19日(火)、20日(水)、22日(金)、8月2日(火)
調 査 先
○JA仙台本店(仙台市宮城野区)、東部営農センター(利府町)
 農事組合法人井土生産組合、農事組合法人せんだいあらはま(仙台市若林区)
 農事組合法人ファーム七ヶ浜(七ヶ浜町)
○JAいしのまき本店(石巻市)
 株式会社サンエイト(東松島市)
○東北大学大学院農学研究科(仙台市青葉区)
調査概要
宮城県の沿岸部では、経営面積100ヘクタール規模の農業生産法人を中心に地域農業の再生が進められてきました。水稲など土地利用型作物に園芸作物を組み合わせる栽培体系の新たな方向性が固まり、2~3作を経て作柄に手応えが得られつつあります。一方、被災から5年が経過した今、経営層の高齢化に伴う世代交代が視野に入る中、家族だけではなく地域住民同士での農業経営を永続的なものとしていく挑戦があらためて始動しています。並行して進むコミュニティの再生のためにも、経営の安定化は必須です。JA仙台、JAいしのまきの両JAは農家と足並みをそろえ、よりきめ細かな視点での支援を強めています。

※本調査結果については『共済総研レポート』No147(2016年10月発行)に掲載しております。

JA仙台
東部営農センター

せんだいあらはま
ミニトマト・アンジェレの栽培

ファーム七ヶ浜
ライスセンター

サンエイト施設外観

サンエイト周辺の圃場
(大豆)

サンエイト周辺の圃場
(水稲)

被災状況

 宮城県は津波による浸水被害が、被災した県の中で最も大きかった。国土地理院によると(津波浸水範囲面積第5報)、浸水被害があったと想定し調査した6県の浸水範囲面積は561平方キロ。同県はそのうち6割に当たる327平方キロで、仙台平野を中心に平地が多かったために被害が拡大したとみられている。
 県によると(2016年1月31日現在)、死者・行方不明者は1万1788人。住家は全壊・半壊(床上浸水は半壊以上の被害)合わせて、23万8128戸が被害に遭った。浸水地域には水田を中心に農地が広がり、農地の復旧対象面積は1万3,000ヘクタール(「みやぎ・復興の歩み4」2015年3月発行)。県全体の耕地面積に占める被害面積の割合は、津波の浸水被害が大きかった6県の中で最も高かった。
 それでもがれきの撤去や農地の除塩などの復旧は着実に進められた。県内で津波被害に遭った市町村における水稲の作付面積は着実に回復し、5年の時を経る2016年には100%復旧の見込みという。園芸関係も復旧対象の91%に当たる163ヘクタールで、農業用施設や畜舎・畜産関連施設も95%前後の施設で復旧済みまたは復旧に向けて工事が着手されている。
 復旧に合わせ、農地は1筆が0.5~1ヘクタール規模と大区画化が進められた。そのため各地で農業法人が大きな役割を担い、復興の動きを早めた。JA仙台では、JA出資による農業生産法人が次々立ち上がった。法人は自らの耕作はもとより、作業受託や農地の受け皿として地域農業の核となり、コミュニティの再興でも多彩にチャレンジしている。JAいしのまき管内でも農業生産法人がいち早く復旧復興に立ち上がった。JAはこの動きを強力に支援すべく、JA主導の農業法人会を設立。会員数は年々増え、冬場の雇用対策でイチゴ栽培に着手したり、6次産業化などの拠点として加工場を整備したりする法人があるなど地域を活気づけている。
 津波被害が甚大な地域はがれきの撤去や除塩に数年の時間を費やした。新たな地域づくりの芽吹きも濃淡があり、いまだ6000人近くが県外に避難している。5年を一つの節目に、被災者一人ひとりや地域の実情を見極めた支援があらためて求められそうだ。

(2016年3月11日)

[仙台地域]

[石巻地域]

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