医療・賠償

地域在住高齢者の転倒、骨折の分析

発表者 医療研究センター長 加藤 龍一
発  表 報告書 2010年3月


概要

1.目的

地域における高齢者の転倒・転倒骨折から機能障害へいたる構造を解明するため、地域社会で生じる転倒、転倒骨折とこれに関与する各種内因の関係、さらにこれらが高齢者の生存に与える影響について分析し、今後、環境要因など外因を含めた全体の構造を解明するための基本的知見を得ることを目的とした。

2.方法

2001年に実施されたT市在住高齢者を対象とした郵送法による自記式アンケート調査にて回収された13066名の内、2004年の再アンケートに回答し、かつ2007年時点まで転居しなかった8285名を分析対象とした。2004年の調査前1年間に生じた転倒、転倒骨折に影響を与えた2001年の内因に関し統計学的分析をおこなった。性別、年齢層別の転倒率、転倒骨折率、性別の屋内外での転倒率を分析した。さらにクロス表により転倒に影響を与えた有意な因子をχ2乗検定により抽出し、これらをもとに転倒状況(転倒、転倒骨折)に関するロジスティック回帰分析による多変量解析を行った。さらにこれらが高齢者の生存に与えた影響について、カプランマイヤー法ならびにCox回帰による生存分析をおこなった。

3.結果

転倒に関する回答を獲られなかった欠損を除く総数は6420名(男性3127名、女性3293名)で、転倒率、転倒骨折率は、男性14.3%、2.1%、女性21.6%、6.2%と女性に高率であった(P<.0.001)。転倒率、転倒骨折率は、性別にかかわらず、年齢層とともに増加した(P<0.001)。転倒または転倒骨折した高齢者は1428名であった。転倒状況(転倒、転倒骨折)に影響する因子に関するロジスティック回帰分析の結果、転倒には外出頻度以外すべての因子が関連した。もっとも強く関連したのは性で、女性は男性より転倒しやすく(OR 1.634)、次に年齢層、痛み部位数(OR 1.262、1.207)。治療病数(OR 1.182)、IADL数(OR 0.920),主観的健康感(OR 1.133)であった。転倒骨折には性別、年齢層、痛み数、主観的健康感が関連した(OR 性別:2.656、年齢層:1.312、痛み数:1.113、主観的健康感:1.317)。転倒状況(転倒なし群と転倒群、転倒骨折群)による2007年までの生存をカプランマイヤー法にて分析した結果、転倒なし群に比較して、転倒群、転倒骨折群は明らかに低下した(P<0.001)。また転倒、転倒骨折後の生存に関する因子についてCox回帰分析を行った結果、女性は男性に比べ生存が保たれたが(HR 0.435)、主観的健康感が低いほど、転倒状況が悪いほど、また外出が少ないほど生存が低下した(HRそれぞれ:1.451, 1.385, 1.128)。IADL数は多いほど生存が保たれた(HR 0.904)が、痛み数、治療病数は有意な関連はなかった。

4.結論

以上より、地域在住高齢者においては、制御できない性、年齢を除くと、体の痛みの部位数の増加や主観的健康感の低下は2〜3年後の転倒、転倒骨折の増加に独立して影響し、これによってさらに外出頻度、IADLが低下することが、その後の生存に悪影響を与えている可能性が推察された。

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