医療・賠償

交通事故と医療過誤競合事案の法理と責任分担に関する研究

発表者 主席研究員 加藤 正男
発  表 報告書 2009年3月


概要

1.はじめに

平成13年3月13日最高裁第三小法廷における交通事故と医療過誤の競合に関する判決(民集55巻2号328頁)は、両者を共同不法行為と認定した。

そもそも、交通事故と医療過誤という異質な不法行為の競合を民法第719条の共同不法行為規定に当てはめて、被害者保護を図ろうとするところに、現在の共同不法行為概念に対する更なる混乱を生じさせている。

そこで本稿では、まず交通事故を例に共同不法行為の概念を検討し、共同不法行為という概念の中で719条1項前段の「連帯して」の意義がどのような役割を果たすのかを考察する。そのうえで、交通事故と医療過誤の競合を例に、異質な不法行為が競合した場合に、それを共同不法行為概念ではなく不真正連帯として被害者保護を図る理論的道筋を立てることを目的とする。

2.考察

719条1項前段適用要件たる「関連共同性」および「各加害者に独立した不法行為責任」を要求することの是非、後段の共同行為者には何らかの関連共同性を必要とするか、さらには減免責の可否について検討を行った。関連共同性(関連共同行為)は、第一義的には主観的共同の存在する行為を内包し、主観的共同のない関連共同行為は、時間的・場所的近接性を備えた同種・同質の行為をいう。同種・同質とは同じ行動規範が適用される行為類型であり、過失の態様である。従来の学説・判例が要求する第二の要件たる不法行為性については不要とし、各加害者の行為と損害との個別的因果関係の不存在はもとより、共同行為者の一方が無過失であっても共同の不法行為者としての責任を負う。後段の共同行為者には、前段適用にならない複数の加害行為が介在した場合に広く被害者を保護する特殊の規定と解すべきであり、択一的競合のみならず偶然な競合でも差し支えない。よって、719条1項前段を共同不法行為規定、後段を競合的不法行為規定と解する。減免責については、1項前段の適用要件からも許すべきではないが、後段は不法行為の競合であることから因果関係の不存在を立証できた場合は認める。

以上から、交通事故と医療過誤の競合は、もはや共同不法行為と解することはできず、競合的不法行為と解すべきである。したがって、民法第709条によって処理されることになるが、被害者の被った損害が「一個不可分」な場合には、719条1項後段を適用する。法律効果は、交通事故と医療過誤の各加害者は不真正連帯の関係になり、被害者の全損害につき全部義務を負うことになる。

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