医療過誤、医療事故の減少、防止に向けた一考察-有効な情報の伝達方法の模索と応用-
発表者 研究員 香川 栄一郎
発 表 研究報告書 2008年3月
概要
- 目次
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- はじめに
- 医療過誤、医療事故に関連して、ここ数年で指摘された事実
- (1)医療過誤、医療事故の事例収集事業について
- (2)マスコミ報道について
- (3)「To Err is Human」、「人は誰でも間違える」について
- (4)インターネット、メールによる情報について
- 小括
- 薬事行政で行われている医薬品情報伝達の具体的な制度
- 対処への一考察
- 結び
1.目的
現在の医療過誤問題に関して、「国民が医師・医療の限界を理解していない」、「医師は医療過誤、医事紛争に関わる実態を把握していない」というそれぞれの立場に「知らない」部分が存在していると考えられる。そこで医療過誤、医療事故防止、減少のために重要な情報、知識が医師、医療機関側に十分に伝わっておらず、その結果、「知らないから起きてしまった事例」が実は多いのではないか仮定し、ここ数年で指摘された行政の施策に対する評価、マスコミ、書籍などに対する見解を概観し、問題点を明確にした上で、医療過誤、医療事故の減少、防止に向けた具体的な方策を検討した。
2.検討と考察
すべて医師、医療機関に医療過誤防止、減少に役立つ必要な情報を伝えることが大前提になりうるのではないかという点に帰着して検討すると、実は十分に情報の伝達が行われていないことが明らかとなる。そこで薬事行政で実施されている医薬品情報の伝達方法(緊急安全性情報、使用上の注意改訂のお知らせ、医薬品安全対策情報、医薬品・医療機器等安全性情報など)を参考にすれば、必要かつ重要な情報(医療過誤事例収集事業の分析結果、厚生労働省が実施している多くの施策の概要、過失の有無・診療科目別・手技別など体系だった構成で医療過誤・医療事故が争点となった裁判例の紹介、難解な法律用語の解説、など)を確実にすべての医師、医療機関に伝達することが可能となることが見出される。
医師、医療機関に正確な情報を適切に伝達することで、「知らない」部分は徐々に解消していくのではないかと思慮される。そのためにも、薬事行政で行われている情報の伝達方法を医療過誤問題においても応用し、確立することが必要であり、それにより「知らないから起きてしまった事例」を少しでも減らすことが可能になるのではないかと考える。