地域コミュニティ活性化へ向けてのJA支援-コミュニティ・ビジネスの中間支援機能強化をめざして-
発表者 石田 正昭(三重大学大学院教授) 問い合わせ先 主席研究員 渡辺 靖仁
発 表 共済総合研究第51号 2007年8月
概要
- 目次
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- はじめに
- 地域コミュニティ活性化の視点
- 埋められない土地条件の圧倒的格差
- 農村版コミュニティ・ビジネスの勧め
- JAによる中間支援機能の強化
- むすび
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- 官から民への分権をめざすソーシャル・ガバナンスの強化には、社会システムとりわけボランタリー・セクターの拡張が不可欠である。しかし、ボランタリー・セクターを構成する自助組織(協同組合)は経済システムへ接近し、他助組織(NPO型組織)は政治システムへ接近する傾向があって、両者の協働ないし統合は必ずしも簡単ではない。
- 都市とは異なり、地縁型自治組織(町内会・自治会)がある程度機能している農山村では、地縁型自治組織と他助組織は協働の関係というよりも緊張・競合の関係を生じやすい。そのなかでローカル・コミュニティとしての地縁型自治組織とテーマ・コミュニティとしての他助組織が重合されたような地域自治組織が全国各地で生まれている。
- 連合自治会(小・中学校区)を範域とする地域自治組織では、食と農、福祉、教育、環境などの地域協同活動(まちづくり活動)が個々人の自発的な活動として展開されている。本稿ではこの種のまちづくり活動を農村版コミュニティ・ビジネスの典型とみなし、地縁型自治組織を組織基盤とするJAがそれへの支援を通じて他助組織としての性質を保持すべきことを提案している。
- 地域自治組織等による農村版コミュニティ・ビジネスの範域と活動分野は多様である。自治会(農家組合)の範域で成立する集落営農、連合自治会(小・中学校区)の範域で成立するまちづくり活動、基礎的自治体の範域で成立する農業公社、市郡の範域で成立する観光公社などのほかに、JAが独自に育成してきた組合員組織(女性部・青壮年部・生産者部会組織)によるまちづくり活動も該当する。
- 農村版コミュニティ・ビジネスの成功要因は区々であるが、あえて一つに絞ればソーシャル・イノベーションを可能にするような社会的企業家が備わっていることである。いいかえれば有形・無形の地域資源のうちで最も重要な資源は人材である。農山村には県庁・市町村・教員・JA・企業のOBなど、すぐれた人材が埋もれていることが多く、その発掘・再生が農村版コミュニティ・ビジネスの今後を左右する。
- JAはインターミディアリー(中間支援組織)の有力な担い手である。インターミディアリーに期待される支援機能は地域密着型と機能・分野特化型に区分されるが、このうちの地域密着型の支援では地区選出理事の果たすべき役割が大きい。JAによるインターミディアリー機能の発揮は、協同組合にその未来を開くような「社会的な目的と経済的な目的の統合」の原動力となる。