縮小しながら発展する地域の創生
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75ウィーン生まれ。ブダペスト、ロンドン、アメリカ、カナダにも居住。「ハンガリー革命」で連合政権法相、ウィーンで総合誌編集主幹、オックスフォード大学・ロンドン大学で講師などを歴任。主な著作に『大転換』、『経済の文明史』など。4.「閉じて開く」のバランス(1)「対馬」というフィールドで学んだこと川井:柔軟性と流動性のある社会という意味でもあるのでしょうか。中沢先生と当研究所とが進めている研究フィールドに、国境離島の長崎県対馬市があります。実際、そこの人たちの暮らしぶりを見ていると、半農半漁で1次産業が優位です。ただ、歴史的に見ても、過去からずっとそこの経済を支えていたのは、隣の国との流れでつながっているのです。江戸時代もそうですが、あのまちを眺めていると、私は非常に柔軟で流動的だと思うのです。そのあたりについて、中沢先生からひと言お願いします。中沢:僕は、実際に対馬に行って人と付き合いながら調査などをする前は、隣の国、韓国の影響をかなり受けてしまっているのだろうと思っていました。現在の観光客の数にしても、釜プサン山から来る観光客が約19万人です。日本から行っている観光客は2万人とか3万人でしょう。その数字だけ見ると、「えっ?」という印象でした。文化はまさに日本の文化そのもので、むしろ本土や九州に残っている文化以上に原型的な日本文化だからです。メンタリティにおいても同様で、「対馬は朝鮮半島と大陸に向かって開いているけれども、根底においては閉じているのだな」と、たいへん強い印象を受けました。世界中の成功している観光地は、たいがいものすごく自分を閉じています。一番すごいと思ったのはバリ島です。バリ島の人たちは、外国人・観光客・ツーリストに対して、ものすごく愛想がいいのです。自分たちの文化も、「はい、見てください、見てください」とやってい

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